東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)42号 判決
一 原告請求原因一および二記載の、特許庁における手続経過および審決の内容についての事実については当事者間に争いがない。
二 右争いのない事実ならびにその成立に争いのない甲第一、第三および第六号証の各記載によれば、本件意匠の意匠を現わすべき物品は旧第二十四類糸巻機のドラムであつて、その登録請求の範囲は、「図面代用写真(別紙(一)の通り)に示す通りの糸巻機のドラムの形状および模様の結合」とされており、その意匠は本件審決において認定された通りのもの(原告請求原因二の(一))であり、また、本件審決において引用された特許第一五五、九三八号明細書に掲載された図面中に現わされた巻糸機送糸転子の意匠もまた本件審決において認定された通りのもの(原本請求原因二の(二))であつて、これを現わすべき物品も同様糸巻機のドラムであることが認められ、これに反する資料はない。
三 そこで以上の両意匠を対比すると、本件審決も正当に指摘する通り、その意匠を現わすべき物品は同種のものであること、その形状は、ともに円〓形に、漸次広くなつたところや狭くなつたところのある溝を、一側の一端を起点とし、右回りおよび左回りの二つの溝を斜方向に走らせたものであること、以上の二つの溝の交差する点は、前記起点と同じ面および正反対の面の中心垂直線上に位置しているため、溝のないところの形は菱形を作つている点において酷似していることの各点を挙げることができ、両者の大きな相違点は、本件意匠においては溝は円〓形の周囲を一周半回つているのに対し、引用意匠においては三周している点にあるということができる。
しかしながら、右の相違点も、本件意匠が、長さが直径の略二倍である円〓形におけるものであるのに対し、引用意匠が、長さが直径の略二倍半である円〓形におけるものであることと相俟つて、溝の交差によつて形成される溝のない部分の形状にある程度の相違がみられるとはいえ、類似の域を脱するものということはできず、本件意匠は引用意匠に現われた同じ構成のくり返しの一部を現わしているにすぎないとみるのを相当とする。
すなわち、両者の意匠を全体として観察するときは、本件意匠の方が引用意匠に比べて簡素化された感をうけるところがあるとはいえ、前記の相違点と併せ考えてみても、本件意匠をもつて引用意匠に類似しない、別個の独立した新規な意匠として登録に値するものとはいいがたく、結局旧意匠法第三条第一項第二号に該当するものとして、本件意匠を無効とした本件審決の結論は正当であるといわなければならない。
原告は本件意匠が登録されるべきものであるとし、その先例として、銑鉄生子を指定物品とする登録意匠(甲第九号証)を挙げるけれども、物品およびその意匠を全く異にするのみならずこの例をもつて直ちに前記結論を左右するに足る資料とはいいがたく、ほかに前記認定を覆えすに足りる資料はない。
四 結局、本件審決の取消を求める原告の請求は理由がないので、これを棄却することとする。